中国には簡体字と繁体字という二種類の文字があります。

現在使われているほとんどの簡体字は1960年代に中華人民共和国政府によって制定されました。ただ簡略化そのものの歴史は古く、1949年の同国成立のもっとずっと以前、秦朝(221 – 206 BC)の頃まで遡ります。ご存知のように草書で書かれた場合などは簡略されたものが多く見られますね。

中央人民政府は公式簡体字を2段階に分けて、1956年に1次リストを、1964年に二次リストを発表しました。下の新聞は中華人民共和国が成立した1949年4月1日のものですが、この頃はまだ繁体字が使用されています。

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現在、中華人民共和国、シンガポール、それからマレーシアでは一般的に簡体字が使用されていますが、香港、台湾、マカオ、それに本国以外の地域コミュニティーではまだ繁体字が使用されています。しかし中国の開放が推進されている現在、情報の交流も盛んになり、上記地域における簡体字の使用は増加傾向にあるようです。これとは逆に中国本土での標識やロゴなどのおける繁体字の使用、この先祖返りのような傾向も同時に見られます。

繁体字の簡略化は字を覚えたり、書いたりするのを容易にすることをその原則としていますが、その際にはいくつかの混乱が、たとえば全く違う漢字に変更されるといった事態が生じているのも事実です。そのいくつかの例を以下に見てみましょう。

繁体字:

簡体字:

どちらも日本語には存在しますが、意味は全く違ったものになりますね。

簡略化についての例外としては「強」という字もあげられます。

繁体字: (11画)

簡体字:(12画)

最後の例として、字の画数やその構造に変化を加えず、ただその左右の位置を逆にしただけのものもあげてみます。日本語では「十分な」という意味の漢字です。

繁体字:

簡体字: